OMORI 考察、解説などメモ置き場

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湖の物語② マリ編

前回の記事(湖の物語①)の続きになります。

今回は湖とマリが関連する部分を中心にしています。

どちらかというと以前に書いたマリとスズランの記事の内容に近い考察となっているかもしれません。

ケルとオーブリーは姉弟を映す鏡である可能性

オーブリーはバジルを突き落としてしまった理由を、

「近寄ってほしくなかったから」と話していました。

人を突きとばす理由としては些細なものです。しかしこのことでオーブリーが小さなことで怒り出し、暴れだす人物と捉える人は少ないと思います。なぜバジルに辛くあたっていたのか、なぜかつての仲間を避けていたのか、多くの理由があったことが後の告白によってわかるからです。

残された5人の中でもオーブリーは特に過酷な状況にありました。乗り越えられないマリの死、バラバラになってしまった親友達、塗りつぶされていたアルバム、家庭環境の更なる悪化。彼女を追い詰めたであろう出来事が多くありました。

そしてオーブリーはサニーが引っ越す事を既に知っていました。

サニーを見た時に動揺してしまったとも話しており、サニーにナイフを向けられたことも、教会での出来事も、大きく心を揺さぶるものだったと思います。

湖でバジルを突き落とすオーブリー

オーブリーが湖で見せた感情の爆発は「その時」に起きた事への怒りによるものとはいえないのではないでしょうか。それは単なるきっかけにすぎず、「今まで」の蓄積によって感情の破裂を起こしているように感じます。

そしてオーブリーが感情を爆発させた出来事は、サニーがバイオリンを壊した出来事と似ているのではないでしょうか。

サニーがバイオリンを壊した直接の理由はきっと些細なものだったのではないかと思います(黒いアルバムの文章から)。

しかしそれは単なるきっかけに過ぎず、それ以前の出来事によって蓄積されていた感情があったのではないでしょうか。

そしてそれを抱えきれなくなり溢れでてきた瞬間、サニーはオーブリーと同じように感情を破裂させてしまったのではないでしょうか。

そしてマリを突き飛ばして階段から落としたことも、バジルを突き飛ばして湖に落としたことも、2人とも本来そんなことをするつもりではなかったはずです。

オーブリーが起こした事故は全く無意味に用意された出来事ではなく、サニーの心の動きを写す鏡となっているのではないでしょうか。

普段大人しい人が些細な出来事で大喧嘩を起こすと、周囲の人が「実はキレやすい人だったんだ」「些細なことで怒る心の狭い人」「我慢のたりない幼い人」などと評価するのはよく見る光景です。

しかしそれは本当に正しいでしょうか?

些細な出来事というのはきっかけに過ぎず、もっと手前に大きな原因が隠れているということはよくあるものです。

そしてこの時オーブリーに詰め寄ったケルはマリを写す鏡となりうると思います。2人の目にはサニーとオーブリーの行動がどう写るでしょう?

以前にケルはマリとそっくりな役割をすることがあると書きましたが、この時のケルもマリの立場によく似ているのではないでしょうか。

マリが話していた湖で見たカーテン

これも湖とマリに関わる部分になりますが、既に以前の記事で取り扱っているためそちらのリンクを貼っておきます。

ヒロの奇跡

ヒロはサニーとバジルが溺れる直前、そしてサニーが「踏ん張る」を思い出した直後という絶妙なタイミングで湖にやってきました。

ヒロはどうやってそんなタイミングで、そして偶然にも湖に現れたのでしょう?

ケルが公園でバジルを見かけたと話していたことを、家族から伝え聞いていたのでしょうか?

しかしこの動画によると、必ずしもケルが公園にバジルが居た事を話すわけではないようです。なんとケルが全く公園の話をしないパターンが用意されています。そうするとヒロは全くのノーヒントでも、奇跡的なタイミングで湖に訪れることになります。

偶然というにはあまりにも幸運過ぎる出来事です。

しかしそれは湖に飛び込んだ時に誰が現れたか、聞こえてきた声が誰のものだったかを考えれば解決する要素かもしれません。

どちらにせよ湖での出来事はグッドエンディングの重要なカギの1つとなりました。

サニーが湖で思いだした「踏ん張る」というスキルは、マリの死を乗り越えるために必ず得ていなくてはならないものです。風に揺らめく「なにか」の姿が鮮明になったとき、サニーは「踏ん張る」ことによってしか耐えることができません。

湖でのマリの言葉を思い返してみてください、まだ「1つ」だけ克服していないものがあると話していたはずです。

高所、クモ、水という恐怖に続いて最後に対峙した恐怖は一体なんだったでしょう?

その時に現れた「なにか」、いわゆるサムシングの正体は木に吊り下げられたマリの遺体です。マリが話す1つだけ残っている克服しづらい恐怖とは、サニーが最後に対峙したトラウマ、自分自身の死を指しているものと思われます(英語版の画像のほうがわかりやすいかもしれません)。

現実世界でサニーが恐怖と対峙したとき、いつもマリの声が聞こえてきました。

そのたびにサニーは恐怖と対峙するためのすべを思いだし、それらを乗り越えてきました。そしてマリはサニーがまだ真実を思いだしていないこの時点で、既に最後のサムシングとの対峙を示唆していたことになります。

サニーを真実と向き合わせるというマリの行動は常に一貫しています。そして現実世界を巻き込んだ一連の出来事と、この時点でのマリのセリフは、サニーが想像できうる範囲を大きく超えているのではないでしょうか。