OMORI 考察、解説などメモ置き場

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それぞれに欠点が存在する

この記事は前回に投稿した「オーブリーのいろいろ」の続きになります。

今回の記事では

花の意味は必ずしも良い意味とは限らないこと

オーブリーの言葉が辛辣になる理由

それぞれに良い面と悪い面があること

完璧な人間が存在していないこと

改めてオーブリーについて

主に以上の5つについて書いています。

花はその人そのものを表している

前回紹介したオーブリーの「自分の気持ちに正直で真っ直ぐな人」とは人柄そのものを表す言葉であり、それ自体には良い面はあれば悪い面もあったと思います。

しかしそれはオーブリーのグラジオラスに限ったことではないと思います。

例えばケルを表すサボテンには「トゲトゲしい」という意味が含まれていました。

白いチューリップの本当の意味はシンプルで謙虚、無垢というものでした。

しかしシンプルとは普通、単純な人、あるいはわかりやすい人に使う表現ではないでしょうか。そして謙虚とは良い言い方ですが、サニーからはむしろ自己肯定感の低さそのものを感じます。図書館にあった湖の記憶を読む限り、事件の前からサニーにはそうした面があったのではないかと思います。

夢の世界のマリはキミは自分が思っているよりも強いのだから、自分を信じるようにと話しました。恐らく現実のマリもこのような言葉をかけていたのだと思われます。(その検証については長くなるので次回の記事にしたいと思います)

同じような場面、例えばミンシーはどうだったでしょう?彼女はケルに何度も励まされながら、そのたびに前にすすみました。そして何より姉であったマリにもそんな一面がありました。バジルがプロ並みと評するほどの花冠をつくってなお、自信を持てなかったマリ。ツリーハウスで皆にクッキーを振る舞いながらも、ヒロのクッキーの方がおいしいのにと言っていたマリ。つまりマリにも謙遜というより、自分に自信を持てない一面があったのではないかと感じます。

マリとミンシーのように、サニーもなにかしら自分を信じることの難しさを抱えていたのかもしれません。滅多に自分をほめる事のない、そんな彼の人柄そのものが謙虚という言葉に含まれているのではないでしょうか。

つまりバジルが6人の花に込めた意味とは、良い面も悪い面も全て内包したその人そのものだったのではないかと思います。

辛辣なオーブリーについて

夢の世界のオーブリーが怒っている時、相手がオモリやヒロであっても率直に自分の思いをぶつけてきます。特にケルが相手のときは言葉が辛辣です。

そしてその言葉の表現は現実の世界でも同じでした。これについては人間関係を掘り下げてみる必要があると思います。

地雷を踏むケル

どちらの世界のオーブリーもぬいぐるみをとても大切にしていました。
しかし夢の世界でケルはそのぬいぐるみを取り上げて隠してしまいました。ラストデュエット時の回想でも、ケルがオーブリーからぬいぐるみを取り上げている場面があります。また海の思い出でもケルはオーブリーにスイカの種をぶつけるというイタズラをしていました。

このオーブリーのセリフは、それらが実際に起きた出来事であることを示していると思います。

夢の世界のケルも現実のケルもよく似た反応をしています。

ケルがオーブリーにしたことを思い出してみてください。

大切なるぬいぐるみを隠す

好きな色をキモいと言ってしまう

大好物のスイカを食べるのをジャマする

それぞれの行動がしっかりと地雷を踏んでいます。オーブリーを怒らせるのに最適な、ある意味では最もリアクションの期待できる行動をしてるともいえます。

ケルは忘れてしまっていますが、ぬいぐるみについてはオーブリーは本当にショックを受けていました。

オーブリーがケルに対して何かと厳しめなのは、ケルのこうした行動によるところが大きいのではないでしょうか。

反対にバジルはこのあたり非常にうまいもかもしれません。食事中の撮影がバレても怒らせたりしませんし、サニーがピンクが似合わないと答えていた場合でもうまく返答しようとしています。

バジルのトゲ

バジルのアルバムを読むとケルについての言及にいくつか気になるところがあります。

例えばジュースを飲むケルの写真。ドリンクをよくこぼすからケルに気をつけないといけないと書いてること。ケルが自分を撮影した写真に対し、ケルがウソをついてると思うと書いたこと。これらは夢の世界でサボテンについて説明しているときの、バジルの態度とも一致していると思います。

周りを元気づけられるケル

夢の世界のオーブリーは涙を見せる場面がとても多いです。

バジルの家へ向かう道中でのピクニック、バジルの家、スペース元彼にバジルについて尋ねた時、ハンフリーの体内で危機に陥った時、いろんな場面でオーブリーは涙を浮かべています。

現実のオーブリーもそうでした。教会や湖、オーブリーの家やツリーハウス。現実のオーブリーも涙を見せる場面がとても多かったと感じました。

これは現実の彼女にも泣き虫だった1面があり、4年を経てもそれは変わっていなかったことを示していると思います。

夢の世界のケルはいつもそんなオーブリーを励ましていました。現実の彼もそうだったと思います。切り株で泣き崩れるオーブリーに対し、夢の世界のときと同じ表情で同じことをしています。

他にも例えばオモリがトラウマと対峙するときも、現実ではミンシーに対しても、ケルはそのまぶしい笑顔で相手を励ましています。オーブリーが涙を見せる時、夢でそうであったように現実の彼もよく彼女を励ましていたのではないでしょうか。

ケルには人を元気づける明るさと優しさがあり、それもまた彼の人間関係を形作る大きな要因となっているのだと思います。

完全な人はいない

そもそもこの作品には夢の世界であってさえ、本当に完璧といえる存在は居なかったように感じます。

ヒロであってさえ苦手な事、出来なかったことがあります。

例えばヒロは虫が苦手で、特に蜘蛛恐怖症の克服ができませんでした。

夢の世界のマリはこのままでは悪化すると言い、現実世界のケルは悪化していると感じています。

この時のオーブリーとサニーの仕草から、2人はヒロのこの状態を初めて見たのではないかと思います。つまり夢の世界のヒロの様子は4年前の彼の姿であり、マリの予見通り恐怖症が悪化してまったことを表した出来事ではないでしょうか。

他にも進学先での新しい友人関係の構築やマリの墓参りもそうです。最終日にマリの墓前に立つことができたのも、親友たちの支えがあるからこそだったと感じました。

そして何の過ちや後悔、挫折も無く生きてきたわけではありません。作中でヒロが後悔していたであろう事が、言及されているものだけで少なくとも4つはあったと思います。また明言はされていないものの、後悔があったであろう出来事が1つあるように感じます。

悪い面があって当然、不満があって当然

完全な人は存在しない。だからこそ誰かが誰かに不満を持つ、そんな事はよくあることです。6人がずっと一緒だったというならなおさらそうではないでしょうか。

そして不満があるからといって相手を嫌っていることにはなりません。

マリを思い出してみてください。小さい頃に友達に厄介なイタズラをしていた、それはケルだけの事ではなくマリにも共通する部分です。当人にバレていなかったというところは大きな違いかもしれませんが。

しかし机に虫をいれるイタズラがバレていなかっただけで、マリにイタズラ好きな面があることは知っていたと思います。マリがヒロをからかう場面は夢の世界にも追憶の世界にもあり、このやりとりは2人の日常だったのではないでしょうか。

しかしほんの一瞬、夢の世界のヒロは不満げな顔をします。

バジルはアルバムにケルのような勇気がほしいとも書いており、ブラックスペースにいたバジルも楽しそうにケルのことを振り返っていました。

それぞれに不満や欠点がありながらも、その上で彼らは親友だったのだと思います。

改めてオーブリーを見る

相手への不満は多くの場合口に出されることは無いものです。人間関係を円満にしようとして心の中にしまい、大抵はそのまま忘れてしまいますが、ときおり溢れることもあります。

しかしオーブリーはハッキリと口に出して伝えています。そしてどんなにケンカをしてもケルとオーブリーは友達のままでした。

ヒロはケルとオーブリーに対し、ケンカをするのはそれほど仲がいいからだと言いました。そして久振りにもかかわらず率直に言い合えることがうらやましいと。きっとそれは大切なことなのだと。

それはオーブリーの持つ良さであり、場合によっては悪い面にもなる彼女の個性によるところも大きいのではないでしょうか。