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ケル 心の強さを持つ者が見るもの

この記事ではケルについての私個人の見方を書いていこうと思います。

ケルの持つ心の強さを表すもの。

それを持つ者が抱える事。

故にケルから見えるサニーについて。

そしてケルだからこそできることについて。

また作中に見えるサニーとの関係についてです。

ジュース値が表すもの

ケルはハート値は低いですが、4人の中でずば抜けて高いジュース値を持っています。

逆に最も低いのがオーブリーです。これはヘッドスペースの冒険でも同じ印象をもったのではないかと思います。オーブリーはベルリーとのイベントでジュース値が、ケルはプルートとのイベントでハート値がそれぞれ増えます。これらのイベントを見るまで、2人の弱点を体感する場面は多かったのではないでしょうか。

ヘッドスペースのオーブリーは4人の中で泣く場面が最も多いです。

これは現実世界でも同じだったと思います。

彼女は現代でもマリの死から立ち直れていなく、安らぐ方法を探して毎週教会に通っていました。また最終日にマリの写真を見て家に閉じこもっている等、センチメンタルな面を見せる場面がとても多いです。

逆にケルは5人の中で最も早くマリの死から立ち直っていました。

心の弱さは装備にも表れているかもしれません。何も武器をもっていないサニーとヒロの違いです。サニーは素手で自信がなく、オーブリーといえば釘バットを持っています。

武器を持つ姿というのは一見強そうに見えますが、武器は心の弱さを表すものでもあります。一見して強力な武器を持ちたがる、持たせようとする、これみよがしに持ち歩く。これらは内面の弱さからくるものです。素手で自信がある、あるいは安易に武器に頼ろうとしないならヒロのような感想になるはずです。

オーブリーの花はグラジオラスであったものの、それは「いつも自分に正直で真っ直ぐな人」を意味していました。6人を表す花は必ずしも花言葉にちなむものではなかったと思います。ストレスへの耐性だけが強い心とは言わないのかもしれませんが。

ケルが最も高く、オーブリーが一番低い数値。悲しい時に殴られると減り、元気になると回復する数値(ケルの元気づける、スノーマウンテンの花)。ジュース値とはおそらくメンタルの強さを表していると思います。特にストレスへの耐性。そしてこれは必ずしも大きい数字であれば良い、というものでは無いと思います。

極端に強いメンタルが持つ弱点

ヘッドスペースのオーブリーは相手の気持ちに立って考えることができていました。メンタルの弱い人は強い共感性を併せ持つ場合が多いそうです。そのため人の悩みや気持ちを理解し、相談に乗ることが上手なことが多いようです。

現実世界で彼女が築いた新しい人間関係において、オーブリーがとても慕われていたのはそうした影響もあるのかもしれません。

オーブリーの言葉から、ケルが最もはやく立ち直ったことが確認できます。

メンタルの弱い人に他人の気持ちを理解できる人が多いならば、強すぎるメンタルを持つ人は他人の気持ちを理解できない場合が多いのでしょうか?

もっともわかりやすいのがこのシーンではないでしょうか。珍しい特質かもしれませんが、異常な事ではありません。

夢の世界での彼は、相手の気持ちに立っていたオーブリーとまるで真逆です。

ケルはバジルの様子がおかしい事に気づきませんでした。そして湖でケルは何故オーブリーがサニーにこう言ったのか、理解できていなかったように見えます。

極端に強いメンタルを持つ人は、心が弱っている人を追い詰める可能性も同じく極端に高いと言います。彼は夢の世界ではスペースボーイを激怒させ、現実の世界ではヒロを励まそうとして逆上させました。ケルのせいだけにするわけではありませんが、オーブリーの説得にも失敗し彼女は感情を爆発させる結果となりました。

憧れる人は多いですが、強いメンタルというのは決して万能な力ではありません。自然とそれを持っていた人には不得手なものが生まれます。このゲームは彼らが得意とすること、あるい苦手なことがよく表されているように感じました。これらを再現するには知識だけではなく、彼らの目線に立った実感としての理解が無ければ難しいと思います。OMOCAT氏のインタビューによれば、このゲームは開発者チームの体験に基づいた部分が多くあるそうです。ケルのような体験をしたメンバーが居たのでしょうか・・。

12歳時点でケルが最もはやく立ち直れたのであれば、もともとその性質を持っていたということだと思います。しかし最初から完璧となれるわけではないのです。

ケルの心の強さは、彼にとって最悪の形で作用したのではないかと感じます。たしかにマリの死後、健在だったのは彼にとっても家族にとっても良い事だったとは思います。

絶対にならないということではありませんが、ここまで強いメンタルを持つ人はやはり極端に鬱になる確率が低いです。自分が同じ心を持っていると仮定してみるのはどうでしょう。

あなたは辛い出来事、あるいは過酷な環境を体験しているとします。気づいた時には仲の良かった友人達が塞ぎ込み、あるいは自暴自棄や挙動不審になり、周りに誰もいなくなりました。あなただけがその精神性に救われ、健在です。果たして自分は心が強くて良かったという結論に至るでしょうか?

できる事ならそうなる前に、人の悩みを理解し相談に乗れる人間でありたかったと思うのではないでしょうか?

自分だけが残ってしまう、まさしくケルが体験したことです。この台詞は自分にできなかったことへの苦悩が表れていると思います。この特質を持てば体験するのは常に残る側、助けられなかった経験、時には原因となる側です。ケルに共感する、あるいは理解できるという人は、彼がする失敗に身に覚えがあるのではないでしょうか。

メンタルの強さとは決して何も感じない事ではありません。ケルもやはりヒロがいないとさびしく、サニーが引っ越していくのも父親の言う通りさびしいのだと思います。意外と彼は素直じゃありませんが、ふとした時に出る言葉の中に本当の心情が表れていると思います。

ケルから見たサニー

ケルからすると、サニーは仲が良いだけではなく頼れる面があったのではないかと思います。

むしろケルよりサニーの方がよくわかりません。私は対比や他者の視点を通してサニーを見ようとしますが、サニーに直接共感したり理解するということができていないと思います。

そもそも聞き上手というのはどういった能力なのでしょう?

バジルのアルバム、ストレンジャーの言葉によると、サニーはとても聞き上手でずっと愚痴や悩み、夢や望むものを聞いてくれていたとあります。

オーブリーは現代や回想にて、サニーと2人でブランコに乗るシーンがありました。現実のシーンではずっと静かに聞いているサニーに自分の気持ちを話していました。自然な光景であったことから、過去に2人でブランコに乗っていた時も同じような形だったのだと思います。また誰にも話していない自身の秘密を、サニーにだけは話していた形跡があります。

ヒロにですらサニーに話し続けるシーンがあります。回想では料理人になる夢について語っていました。

12歳の時点で既にが持っていたこの能力、いったい何に由来するのでしょう?

またサニーがヘッドスペースに生み出した友人たちは、現実の彼らの言動や行動にそっくりです。なぜ心をそこまで再現できるのでしょう?

彼が作中で見せる超記憶力のおかげ?ド田舎おじさんも驚く豊かな想像力のおかげ?それとも先天的な共感的理解力があった?白いチューリップ、シンプルで謙虚、無垢な人柄の持ち主だったから?

聞き上手ではない私には、彼を直接理解することは難しいかもしれません。どうしてもオーバーに捉えてしまいます。

ケルから見ればサニーは自分にはない、わからない特技を持っていたと思います。しかしサニーから見れば、逆にケルにしかない力があったと思います。

対比すれば彼らが補い合う部分が見えてくるのではないでしょうか。

ケルの持つ力

夢の世界のケルは誰かが落ち込んでいる時、怯えている時、元気づけたり勇気づけたりしてれる場面が多くありました。また彼のスキルに元気づけるというものがあり、ケルの特徴をよく表したものだと思います。

同じ面は現実世界ではより顕著に表れていました。ミンシーやジェシーを励まし、前向きになれるよう行動したのはケルでした。何よりサニーを家から連れ出し、時には勇気づけたのも彼でした。人を元気づける、前向きにさせるというのも強いメンタルを持つ人には多い特質です。自分だけが耐えきる、立ち直ることだけに、心の強さが作用してもそれだけで良い結果とは限りません。立ち直った彼がサニーを連れ出したことこそが、最も素晴らしく強さを活かせたと言えるのではないでしょうか。

サニーはシャイであまり話さないとバジルのアルバムにあったことから、元気づける、勇気づけるといったことはサニーには不得手だったのではないかと思います。

また現代ではマリの墓前や裏庭に行く際にヒロを気遣うなど、夢の世界にはなかった相手の気持ちに立つ場面がありました。まだ身近な人だけかもしれませんが、彼は自分にできなかったことと向き合っていたのかもしれません。他にもバジルの家やカレンとショーンの家で積極的に料理を手伝ったり、ポリーさんに自分に相談するよう伝えておくなど、頼もしい場面が多くありました。彼の行動がきっかけとなってうまくいった出来事は多くあります。彼だからこそできたことを、何度も見たのではないかと思います。

ヒロもケルの成長ぶりに感動しているシーンが、一瞬でしたがありました。彼はまだ16歳です、十分だと思います。

ケルとサニー

ケルとサニーの関係を読み取れるものは非常に多くあります。図書館では学校の昼休みに、一緒に食堂に行く2人の様子が記されていました。これが日常の光景だったようです。

夜中にこっそり抜け出して2人でホビーズで遊んでいたケルとサニー。そして朝が弱くても、サニーへのプレゼントの為に毎朝新聞配達をしていたケル。

湖に沈んでいくバジルを見て、迷うことなくその救助をサニーに託すケル。

サニーに話し続けた時のヒロと、同じようなことを言っています。この時ケル自身もサニーに兄弟の秘密を話していました。

ミンシーの目にもケルとサニーは名コンビと写ったようです。

ケルはサニーから20ドルを借りようとする場面が初日に2度もあります。この他にも最終日にオーブリーから1ドルを借りていました。

オモリルートでのブラックスペースにお金のプールで泳ぐケルがいて、プールを調べると何度も20ドルが出てきます。この事から彼のこの癖は昔からだったのでしょう。

意外にもサニーにはケルにお説教をしようとした記憶があります。考えてみればサニーは自分でバイトに応募したり、自ら家庭教師の求人広告を手に取り面接を受けにいくなど、自発的な行動はしっかりしています。

そうしたことを踏まえると、ケルがサニーからお金を借りたまま返さず、後にサニーが何も言わずにしっかり抜いていく。これが長年の付き合いを経て、完成された2人の関係なのかもしれません。

実際サニーはケルの長所と短所をちゃんと理解しているようです。それを知っている上で名コンビということに友情の深さを感じます。またそれぞれがお互いにない長所を持っていて、補い合えるのも彼らの良さではないでしょうか。

 

ケルの人物像を読み解くことは、ある面で物語の真相に近づくと思います。

それについて説明するにはこの物語に登場する趣味について、そしてなぜケルにできなかったことが描かれる必要があったのかについて、考えを書く必要があります。

また別な記事にてそれぞれ書きたいと思います。

 

あんなさんとよるるさんの、ケルの誕生日記念イラストが公開されているので、Tweetリンクを貼っておきます。

2人のイラストが多くの方に届きますように。